Basler ace 5Mカメラの思わぬ落とし穴
Basler社のGigE Visionカメラのaca2500-14gm/gcは、500万画素の高解像度ながら、5万円台というとってもお手頃価格で魅力的なカメラです。
ただ、安いからには何か理由があります。落とし穴にはまらないように気を付けて安いカメラを使い倒しましょう。
落とし穴1 ローリングシャッター
このカメラの最大の落とし穴が「ローリングシャッター」です。
一般的なグローバルシャッターは撮像素子全体で、露光するタイミングは一致していますが
対して、ローリングシャッターは、上から順に露光開始タイミングが遅れていきます。
1: |===露光中===| 2: |===露光中===| 3: |===露光中===| 4: |===露光中===| 5: |===露光中===|
このように1行ごとに露光開始と終了のタイミングが遅くなります。
そのため、動いているものを撮影すると斜めにゆがんだ画像になります。
このカメラは「ハーフグローバルシャッター」という面白いモードもあります。
1: |===露光中===| 2: |=====露光中===| 3: |=======露光中===| 4: |=========露光中===| 5: |===========露光中===|
このように各ラインの露光開始のタイミングは一致しますが、終了タイミングはグローバルシャッターと同じです。
普通の照明でこのモードを使うと、下に行くほど明るくなります。
どちらのモードを使った場合でも、移動体を撮影するには、ストロボが必須になります。
ストロボを使うことで、同一のタイミングで高速シャッターを切る状態を作り出します。
ハーフグローバルシャッターは、ローリングシャッターと比べて、ストロボを発光させるタイミングの調整が簡単です。
ただ、安い500万画素カメラでもストロボ照明まで使ってしまうので、低コストのメリットが少し薄れます。
このカメラは、基本的に静止しているものを撮影することに向いています。
落とし穴2 撮像素子がかなり小さい
500万画素で1/2.5インチです。1画素分で2.2x2.2μmしかありません。30万画素カメラに換算すると1/10インチという極小の素子です。
500万画素カメラなので、当然レンズも500万画素対応のものを使わなければなりませんが、素子が小さいとそれだけでは解像度が不足します。
レンズが撮影したものはイメージサークルの大きさに結像します。そしてカメラの撮像素子はイメージサークルから一部を切り取って映像に変換します。
撮像素子が大きな場合は、イメージサークルのより多くの面積から映像を作れるので、レンズの設計通りの解像度が得られますが、レンズ設計の想定より小さな撮像素子の場合は、イメージサークルの極一部の情報から映像を作り出すため、解像度が不足する可能性があります。
このカメラの場合、1/2.5インチと一般的な500万画素カメラに対して小さな撮像素子のため、完全に500万画素の解像度を生かすのは難しいです。1000万画素対応の高価なレンズを使えば、かなりいい線まで改造しますが、レンズが高価なため、低コストのメリットが生かせなくなります。
おまけ
実際に150万画素、1000万画素対応レンズで撮影した画像を載せておきます。500万画素対応レンズは、ちょうどいいサイズがなかったのでパスします。下の画像は500万画素から一部切り出したものです。ロゴの「tion」の部分だけさらに拡大して比較します。
まとめ
aca2500-14gm/gcは安価に500万画素を実現できるいいカメラです。
ただし、移動体の撮影や、500万画素の解像度ギリギリに設計された用途には向いていません。
うまく用途を選んでうまく使ってください。
(2011/9/22追記)
Basler Pilot pia2400-17gmの場合
2/3インチサイズのCCDを使ったpia2400-17gmで同じような画像をとってみました。
素子サイズが異なるので、ほぼ同じ視野となるようにレンズも変更しています。
KOWA LM50JC10M(50mm, 10M画素向け)レンズです。
さすが、画質重視のPilotシリーズ&1000万画素対応の非球面、低分散レンズを使った最高のレンズの組み合わせです。きりっとした非常にきれいな画像が取れました。
下の画像は、100%(ピクセル等倍)です。
画質重視の検査の場合は、やはりPilotをお勧めしたいです。(でもaceの値段も魅力です。。。)